109 / 216

ロミオとジュリエット5

「役柄的には優璃と似てると思うけど。お姫様を横取りしようとするタチの悪い泥棒的な」 「あ?」 慎太郎くんのまるで挑発のような発言に、生駒くんが鋭い眼光を彼に向ける。 こ、これは、一触即発!? なんとかしなければと僕が口を開く前に、志音くんが動いた。 2人の間に割り込み引き離す。 「もうっ。虎くん怖がってるから!」 それにピクリと反応した2人は大人しくなった。 すごい、流石は志音くんだ。 僕は何故か感動して、パチパチと拍手を送っていた。 「なんで拍手?」 「いや、なんとなく?」 それから時間は過ぎていき、どんどんと文化祭が近づいてきていた。 そしてついに明日が文化祭当日。 今日は朝からずっと雨が降っていた。 劇の練習を終え、2人は帰路につく。 すっかり文化祭一色になった学校を出て、駅までの道を傘を並べて歩いて行く。 口下手な僕だが、話し上手の慎太郎くんといるとたくさんお喋りができる。それは彼が僕に話を振ってくれたりするおかげだ。 本当に慎太郎くんは凄いと思う。気を配れて、要領が良くて、僕にはないものを全部持っている。 初めて彼を見た時から、ずっと憧れていた。 まるで太陽のように眩しくて、僕とは住む世界が違い過ぎると感じていた。 だから決して交わることはないと思っていたのに……。 今こうして彼の隣を歩いていると、なんだか不思議な気分にさせられる。 声をかけられるようになった当初は、何度も夢なのではと疑って頬をつねったものだ。 「虎介?どうかした?」 「!」 思い出に浸っていると、いきなり顔を覗き込まれた。 急に縮まった距離に鼓動が跳ねる。傘の持ち手を掴んだ手に力が入った。 「え。どうかしたって……なんで?」 「いや、なんか微笑んでた?ように見えたから」 「へっ?」 言われて咄嗟に手で口元を覆う。 うそ。僕ニヤニヤしてた?

ともだちにシェアしよう!