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ロミオとジュリエット6
「ご、ごめん……!気持ち悪かったよね……!」
「え?いや、俺はただどうしたのかなって思って」
「それは……」
慎太郎くんとのいろいろを思い出していました、だなんて言えない。
僕はどう言おうかと悩み、あわあわする。
その時──
「シン?」
聞きなれない女性の声が前方から聞こえた。
顔を向けると、そこには驚いた顔をした女の人が立っていた。
一目見て、綺麗な人だなと思った。
サラサラとした長い黒髪に、整った顔立ち。スラッと細い体は背も高く、大人びたかっこ良さを感じる。見たとこ、歳は二十代前半だろうか。
さっき彼女は、確かに「シン」と言った。ならば慎太郎くんの知り合いなのだろう。
そう思って横を見ると、慎太郎くんも彼女と同様驚いた顔をしていた。
そして、その口が開かれる。
「結衣 ……?」
「……っ」
親しみのある呼び名に、瞠目した。
途端ズキっと胸に痛みが走る。
なんだ、これ……。
なんで、こんなに苦しいの……?
「虎介、マスクと眼鏡付けて」
「え?」
突然そんなことを言われて固まっていると、「お願い」と彼が横目で僕を見る。それで僕は困惑しながらも顔を隠した。
そんな僕らのやり取りに気づかず、結衣と呼ばれた女性は慎太郎くんに走り寄る。
そして……
彼に、勢いよく抱きついた。
「なっ、おい抱きつくなって!」
「えーなに久しぶりじゃん!元気してたっ?」
「話聞けよ!」
満面の笑みを浮かべる女の人に、慎太郎くんは声を荒げる。
いつもの優しい口調じゃない。砕けた口調。
もしかして生駒くんが言ってた以前の慎太郎くんは、こんな感じで話していたのだろうか。
だとしたら、彼女はその頃からの知り合い?
しかも、かなり心を許す仲?
考えれば考えるほど頭がモヤモヤして、僕はただただ目の前の2人のやり取りを呆然と眺めていた。
そうしていると、偶々女の人と目が合ってしまった。
動きを止めた彼女は、目をパチパチ瞬かせて僕を見つめる。
「え?なに。この子あんたの友達?」
意識がこちらに向いたことで彼女の抱擁から抜け出した慎太郎くんは、キュッと眉を寄せた。
その仕草がどこか子供っぽくて、また胸のあたりに痛みが走る。
「結衣には関係ないだろ」
「は?なによ。相変わらず生意気なやつ」
そう言って慎太郎くんを睨み付け、次には再びこちらに視線を向けてきた。
それにビクつく僕に、彼女はニコリと笑みを浮かべる。そのまるで別人のような優しい笑みに、僕は「え?」と目を見張った。
「どうも。いつもシンがお世話になってます」
「……はい?」
訳が分からず慎太郎くんに顔を向けると、彼は一度溜息をつき、彼女を指差した。
「これ、俺のいとこ」
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