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ロミオとジュリエット10

彼女は瞠目し、ジッと虎介を見つめ返す。 その時ふと、結衣は何かが引っかかった。 「……ねぇ。ちょっと、顔見せてくれない?」 「へっ?」 突然のお願いに間抜けな声が出る。 顔?顔って、今見せてますけど? いや、違う。そういうことじゃない。 つまり結衣さんは、マスクと眼鏡を取れって言ってるんだ。 「…………いや、無理です」 「なんで?」 「なんでって、見せたくないので……」 「何を?」 「いや、顔を……」 他に何があるのだろう?と思ったが、素直に答えておく。 それでも結衣さんは引かなかった。距離を詰めてきて、後ろがソファーの僕は下がれなくなる。 「ちょっと確認したいだけなの!私の中のセンサーが反応した理由を知りたいの!」 「せ、センサー……?と、というか離れてください……!?」 「お願い!一瞬!一瞬でいいから!」 何故か鼻息が荒くなっている結衣さんに、僕は青ざめる。 ジリジリと近づかれ、ついに彼女の指がマスクと眼鏡に触れた。 スルッと外される相棒たち。 咄嗟に目を瞑りジッとしていると、何故か部屋に静寂が訪れた。 結衣さんの反応がなく、時計の針の鳴る音しかしなくなる。 不思議に思った僕が恐る恐る瞼を開いてみると、目の前にはあらん限り目を見開いた結衣さんがいた。 (これはどういう状況だ……?) カチカチに固まってしまっている結衣さんに狼狽し、どうすればいいのか分からずに僕も固まる。 なんだ?結衣さんなんで停止してるの? まさか何かの発作?え。それって救急車呼んだ方がいいのでは? でも発作と決まったわけではないし。あ、慎太郎くんに連絡すれば…… その時だった。 「っ、うわぁ!?」 思考に耽っていた僕に、結衣さんが勢いよく飛び付いてくる。 いきなりのことに対応できず、彼女共々カーペットの上に倒れ込んだ。 衝撃で瞑っていた目を開ければ、僕の胸に顔を埋めた結衣さんがいて目をパチクリさせる。

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