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ロミオとジュリエット11

え、なに?何が起きたの? 「あ、あの結衣さ……」 言うより先にガバッと彼女が顔を上げた。 僕を押し倒した状態でしばらく見つめ合い、次には思いっ切り抱きつかれる。 「何この子めっっっちゃかわいい!!!」 「!?」 (はいぃぃぃ……!?) え、待って。まさか僕襲われてる!? いや、抱きついてるだけだし大丈夫? いやいやっ、その日会った女性に押し倒されて抱き付かれるのって普通じゃないから!! 僕が混乱している中で、結衣さんの鼻息がどんどん荒くなってきている。 まずい……、これは本格的にまずい!今すぐ逃げないと!! 「あ、あの結衣さん!離してくださ……っ」 「ただいまー」 「……へ?」 「……え?」 リビングに入ってきた慎太郎くんと目が合った。 一瞬時が止まり、2人ともピキリと固まる。 慎太郎くんは順にこの状況を確認し、すぐに理解したようだった。そして…… 「何してんだこのショタコンッ!!」 と、彼らしからぬ剣幕で結衣さんを僕から引き剥がすのだった……。 「ほんっっとごめん!つい取り乱してしまって」 「は、はぁ」 手を合わせて謝罪する結衣さんに、僕は呆然と返事をする。 僕の隣に座った慎太郎くんは、苛々とした様子で結衣さんを睨みつけた。 「こいつ、“かわいいもの”に目がないんだよ。だから素顔見せたくなかったのに」 「何言ってんの!こんな素晴らしいほどの『かわいい』を隠し通そうだなんて信じらんないわ!」 「信じらんないのはお前だろ。いきなり押し倒すとかマジであり得ねぇ」 口喧嘩を始める2人に汗を流す。その話の元が自分であることが居た堪れなかった。 確かに押し倒されてビックリしたけど、結局抱きつかれただけだったしそこまで叱らなくても……。 そう言おうとして口を開こうとした僕に、結衣さんがバッと顔を向けた。ビクつく僕に、彼女は真顔で切り出してくる。 「あの、虎介くん。お願いがあるんだけど、是非50枚ほど写真を撮らせてくれないかな?」 「へ?」 「あ、私カメラマンやってるの。それでありとあらゆるかわいいものを撮りたいと思ってて、是非虎介くんの写真も……」 「やめろ変態カメラマン」 「あぁ?」 また火花が散りそうになり、僕は慌てて割り込んだ。 「え、あのっ、1枚だけなら……」 「1枚かぁ〜……」 「さ、3枚だけなら……」 「3枚かぁ〜……!」 「…………5枚だけなら」 「ありがとう虎介くん!!」 嬉々としながらカメラを用意し出す結衣さんに、僕は苦笑し慎太郎くんは面白くなさそうに口を尖らせた。

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