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実る想い2
その時ふと、目に留まったドアから慎太郎が入ってきた。
彼の姿を見た瞬間、虎介は息を呑んだ。
ロミオの衣装を着飾った慎太郎くんは、驚くほどカッコいい。
中世風の衣装を着た彼は、まるで王子様のようだった。黒のベストがシュッとした体によく似合っている。
彼の登場に気づいた女子たちはもうメロメロだ。顔を赤らめてきゃあきゃあ騒いでいる。
一方男子たちは敗北者のように打ち拉がれていた。
「くそぅ。なんであんなにカッコいんだよ……」
「勝てるわけねぇ……。いや、張り合おうとも思わねぇ……」
「本当にいるんだな、ああいう王子様みたいなやつ……」
みんなの中で、生駒くんだけが元気に張り合っている。
そんな彼も、貴族風の衣装がよく似合っていた。彼の甘いマスクに素晴らしくマッチしていて、ある意味一番はまり役かもしれない。
スタイルがいいって得だよな。僕ももっと身長が欲しい……。
僕もいつの間にか打ち拉がれていると、目の前に慎太郎くんがやって来た。
側に来るとキラキラが増して一層カッコよさが際立っている。
つい顔を赤らめていると、彼は僕を見つめて優しく微笑んだ。その笑みは本物の王子様のようで、ドクンと心臓が跳ねる。
「流石は虎介。すごいかわいいね」
「え。あ……し、慎太郎くんはすごくカッコいいよ……!」
咄嗟に返すと彼はキョトンとした顔をして、次には子供のように無邪気な笑顔を浮かべた。
「虎介に言われると嬉しい。ありがと」
「!」
(な、なななな……っ)
一気に鼓動が早まった。
堪らず顔を逸らして両頬を手で包み込む。
なんだそれ、なんだそれ……!
反則だよ……っ。そんなのってずるい!
「虎介」
「!」
彼のキラースマイルに悶える僕を楽しそうに眺めていた彼は、次には拳を突き出した。
「本番、頑張ろうね」
その言葉にハッと慎太郎くんを見て、やがて僕も笑みを浮かべる。
少し前の自分だったら、こんな現実など訪れるはずがかった。
でも慎太郎くんと関わりを持ってから、僕の暮らしは目まぐるしく変わっていった。
あの洗い場で慎太郎くんに素顔を見られた瞬間から、何かが動き始めたんだ。
一人ぼっちだった僕に慎太郎くんが手を差し伸べてくれたから、僕は今ここにいる。
「うん。頑張ろう」
向けられた彼の拳に、僕は自分の拳をコツンと合わせた。
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