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実る想い3
「うわぁ、すごい人……」
舞台裏からこっそり覗いてみると、体育館が人でいっぱいになっていた。
基本文化祭中は、自分のクラスの出し物以外では自由行動だ。だから劇を見るのも見ないのも自由なのだが、まさかこんなに来ているとは……。
きっと殆どが慎太郎くんや生駒くんのファンの子たちだけだと思っていたのだ。なのに、こんなのって……。
「お、お腹痛くなってきたかも……」
「は?おいおいしっかりしろよジュリエット。もうすぐ本番だぞ」
「生駒くんはなんでそんなに平気なの……」
「ん?だって俺ミスらねぇし。寧ろこんなにたくさん観客がいんなら、最優秀賞を取れる確率が上がるってもんだ」
「君のそういうところ、ほんと尊敬する……」
生駒くんって、緊張することあるのかな。
いつもと変わらない彼を見て、苦笑いが溢れる。
でも僕自身、ここまでみんなと頑張ったのだから最優秀賞を取りたい気持ちはあった。
クラスのみんなのために、頑張らないと。
そう思うと、やる気が出てくる。
僕のポテンシャルは、自分のためよりも誰かのための時の方が上がるのだ。
運動会も、徒競走の時よりリレーでの方が速く走れたし。
その時は「虎介らしい」って父さんと碧兄に笑われたっけ。僕も2人につられてケラケラ笑っていた。
そんなことを思い出して、懐かしい気持ちになる。
すると時間管理をしている委員の人が、僕らに残り1分を告げた。
昔の記憶から離れて、僕は「よし」と気持ちを切り替える。
いよいよ、本番だ。
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