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実る想い8

「ああ、まだ覚めていない。昨日の夢は、やはり現実だったんだ」 「ああロミオ。私も、すべて夢であったら胸が張り裂けて死んでしまうんじゃないかって」 体を離したロミオは、ジュリエットの手を握りしめた。その手の温もりを強く感じ取るように、もう片方の手でもその手を包み込む。 「ほら、夢じゃない。こんなに暖かいんだ」 そう言って優しく微笑むロミオに、ジュリエットも笑みをこぼした。 2人は幸せに包まれながら見つめ合う。 本来ならここで二人は上人の手で結婚の誓いをして夫婦となる。 しかし今回はここで物語を終わらせるため、少し内容を変えてあった。 「ロレンス神父、お久しぶりです」 舞台に出てきたのは、生駒の演じるパリスという貴族だ。 ジュリエットとの婚約を望む、謂わば物語での悪役である。 「パリスさん……!」 「お?これはこれは愛しの妻よ。どうしました」 「愛しの妻ですって?それは夫が言う台詞です」 「これは失礼、気が早すぎた。麗しの恋人よ」 「それは恋人が言う台詞です」 「これはつれない。私はあなたの心を幸せで満たしてあげられるというのに。その時あなたの瞳は一層美しく輝き、柔らかな唇には微笑みが宿ることでしょう」 その甘いマスクで歌うように愛を紡ぐ生駒に、女子生徒たちは虜にされていく。 悪役としての嫌らしさの中に垣間見える優雅さが、彼の色男さに磨きをかけていた。 生駒くんのことだから、きっとたくさん練習したのだろう。 学校での練習の時も彼は真面目に取り組み、何度も僕や演劇部の子に質問をしていた。 その努力する姿に、僕も一層頑張らないとと思わされたんだ。

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