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実る想い9

「パリスだと。ジュリエットに結婚を申し込んだ、あのパリスか。しかしジュリエットはお前の妻ではない。私の妻になるのだ」 前に出たロミオが、ジュリエットを隠すように立ち塞がる。 そんなロミオをパリスは嘲笑った。そして先程の甘露のような声音とは異なり、吐き捨てるように言葉を返す。 「恥辱が憎しみとなって駆け巡る。私は彼女の両親に対して、お嬢さんのジュリエットを嫁に欲しい。淑女達の憧れの的であるこのパリスの妻になって欲しいと、自らこの頭を下げて願い出た」 「待て、ジュリエットは僕と結婚するのだ」 「まだ言うか!ジュリエットはこのパリスの妻だ!」 パリスはそう言うと、剣を抜きロミオに斬りかかった。ロミオも剣を抜き応戦する。 その決闘のシーンは練習でも力を入れていた部分だ。 2人とも能力が高いから、とことんレベルの高いものを目指した。 練習中は生駒くんがムキになったりして大変なこともあったが、結果的に完成度の高いものになったと思う。 2人の身のこなしに、観客は盛り上がりを見せる。 「ロミオ!」 「汚らわしい。ジュリエットを妻などと、二度と呼ぶな!」 剣の交わる音とともに、激しい決闘が続いた。 そしてついに、ロミオがパリスを突き刺す。 致命傷を与えられたパリスはよろめき、倒れ込んだ。 パリスに勝利したロミオも傷つき膝をつく。 「ロミオ!」 彼の元へ、ジュリエットは駆け寄った。 瞳に涙を浮かべる彼女に、ロミオは優し気な微笑みを浮かべる。 そしてジュリエットの頬に手を添え、その涙を拭った。 「君が僕の名前を呼んでくれるだけで、僕はこんなにも幸せに浮かれ騒ぐ……。ジュリエット。啀み合いのない世界で、僕たちはこれから幸せになろう。いつまでもいつまでも、一緒に暮らそう」 「……ええ。愛しているわ、ロミオ」 ラスト、2人は口付けをしこの物語はおしまいだ。 もちろん口付けのシーンはエアーでする。 ジュリエットの頭に手を回したロミオがゆっくりと顔を近づけ、ジュリエットはそっと瞳を閉じるのだ。 口付けはロミオが後ろを向く形になるので、観客には見えないことになる。 視界が見えない中、すぐ側に彼の存在を感じた。 このまま少しの間動きを止め、そして体を離す。 それが本来の段取りのはずだった。 (……ぇ) 一瞬。 ほんの一瞬、柔らかい何かが唇に触れた。 反射的に目を開けると、すぐ目の前に慎太郎くんがいる。 彼は優しく微笑んで、僕に告げた。 「僕も、君を愛している」

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