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実る想い10
終わってからは、大勢の人に囲まれ写真撮らせて欲しいと懇願されたり、演劇部から勧誘されたりと本当に大変だった。
そして文化祭の結果は──最優秀賞。
1年生が取った前例は今まであらず、まさに前代未聞のことだったという。
結果を聞いた時、みんなと満面の笑みでハイタッチをした。
本当に本当に嬉しかった。嬉しすぎて、少し涙が溢れた。
それから後片付けを済ませた後、僕と慎太郎くんは教室に2人でいた。
文化祭の間、僕たちは化学室を使うことになっていた。本来の教室は荷物置き場になっていて、誰も来ないからひどく静かだ。
「お疲れ様、虎介」
差し出されたペットボトルに、僕は自分のペットボトルを軽く当てる。
「慎太郎くんもお疲れ様。最後のタテ、凄くカッコよかったよ」
「まぁ幼馴染だけはあって、優璃とは呼吸合わせやすかったからね」
そう言って笑う慎太郎くんにつられて、僕も笑みを浮かべた。
この穏やかな時間が心地いい。彼の隣にいることに、こんなにも幸せを感じている。
「あ。虎介もうペットボトル空じゃん」
「え?」
指摘されて見れば、ポカリが空になっていた。
いつの間にか飲み切ってしまっていたようだ。
今日はよく動いたから、かなり喉が渇き飲むペースが速かったのだろう。
もう一本買ってこようかと席を立とうとすると、目の前に僕のと同じポカリが差し出された。
「俺の飲んでいいよ。まだ喉乾いてるんでしょ?」
「あ、うん。ありがとう」
お言葉に甘えてペットボトルに口を付ける。
そしてコクリと飲み、彼に返そうとして僕は動きを止めた。
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