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実る想い13
視線の先には、幸せそうに幼馴染と笑い合う想い人の姿があった。
あーあ。なんで俺って、こうついてないんだろうな。
一番見たくなかった場面に、落ち合ってしまうだなんて。
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「あ。もーどこ行ってたのさ」
文化祭も終わり、下校時間。
生駒を昇降口で待っていた志音は、なかなか来なかった相手に頬を膨らませた。
しかし生駒の表情を見て、何かを察する。
俯いて歩いてくる生駒に、志音は真剣な表情を向けた。
「なんか、あった?」
その質問に、生駒は足を止める。
静寂が起き、やがて生駒は俯いたまま自虐的な笑みを浮かべた。
「……フラれた。やっぱおれ、シンに勝てねーや。落ちこぼれの俺がどんだけそれを誤魔化したって、結局は何も変われてない……」
その痛々しい姿を、志音は黙って見つめていた。
こんなに弱音を吐く生駒は見たことがない。
それだけ優璃は、虎くんが好きだったんだ。
胸に感じる痛みを堪える。
大丈夫。こんなことは慣れている。
僕は優璃を支えたい。それができるなら、自分の想いなど犠牲にできた。
「……そんなことないよ。優璃には、優璃のいいとこ、ちゃんとある」
優璃の目の前まで歩み寄り、その頭を撫でてあげる。
昔は僕よりチビだったのに、すっかり大きくなった優璃。もう頭を撫でるだけでも一苦労だ。
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