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日常2

「たった数日ですっかりファンクラブできてんじゃん」 「えっ……、あの人たちがっ?」 「いや、どこからどう見てもファンクラブだろ。しかも男女の割合に大差ないとか。寧ろ男子の方が多くね?」 「うぐ……っ!」 指摘されたくないところを指摘されてダメージを食らう。 でもなんか、顔を見せた途端一気に変わるんだな……。なんというか、マスクマンの時と凄い扱いの差である。 「この世界は残酷だ……」 「え。いきなりどした?」 遠い目をして言えば、隣で生駒くんが困惑しているのが分かった。僕もつい口に出ていたことに赤面する。 「虎介くーん!!!」 「!?」 「なんだ?」 突然ハチマキ集団の1人が大声で僕の名を呼びながら走ってきた。 ビックリして硬直する僕の目の前に、ズザザッとスライディングのような勢いで片膝をつき、彼は僕を見上げる。 紋章の色からして二年生の男子生徒さんは、真っ直ぐに僕を見つめて手を差し伸べてきた。 「ああ、麗しの虎介きゅん。どうか今日の昼、この僕と一緒に食事でもどうかな?」 「へ?」 なんだ、この展開は……。 訳が分からず絶句する僕と生駒くん。 するとその先輩の手を誰かが掴んだ。 「俺でよかったら相手しますけど?」 「ひっ!」 にっこりをと笑いながら握った手をミシミシいわせる慎太郎くん。 いつもは爽やかな笑みが今は怖かった。隣で生駒くんが「出た、黒シン様」と呟いたのが聞こえる。

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