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日常3
先輩はその笑顔に怯え、転がるように逃げて行ってしまった。一体なんだったのかと、汗を流し、僕は慎太郎くんに顔を向ける。
「顔を出した途端これかぁ。やっぱり隠したままの方が良かったかな」
「お前が原因だろ。勝手か」
「だからちゃんと責任はとるよ。虎介は俺が守るから、安心してね」
そうして今度こそ爽やかな笑みを浮かべる慎太郎くんに、僕はつい顔を赤らめる。
男なのに、なんか恋する乙女みたいで恥ずかしい。
誤魔化すように視線を彼から晒すと、ふと視界に入った生駒くんに首をかしげた。
「生駒くん、どうかした?」
「え?何にもないけど、なんで?」
「いや、なんか……」
辛そうな顔、してた気がしたから……。
そう言いかけて口をつぐむ。
なんだかわざわざ彼に指摘してはいけないような気がしたのだ。
少し間を開けて、なんでもないと首を横に振る。生駒くんは不思議そうな顔をしたけど、特に追求はしてこなかった。
***
「生駒くん。どうしたんだろ……」
「え?」
お昼休みの時間。
なんとなくいつもの感じで、僕は慎太郎くんと東階段でお弁当を食べていた。
クラスメイトから一緒に食べないかと誘われたけど、なんとなく遠慮してしまった。
なんというか、この時間は慎太郎くんと2人でご飯を食べるのが僕の日常で、それは失いたくないと思ったから。
夏は暑いし、冬は寒いけど、なんとなくこのままがいい。
「優璃がどうかした?」
「ん。……あ、その」
いつの間にか口に出ていた呟きに、慎太郎くんが首をかしげる。
偶々見てしまった生駒くんの表情が気がかりだった。なんだか痛みを堪えているようで、怪我でもしてしまったのかと思ったのだ。
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