134 / 216

日常3

 先輩はその笑顔に怯え、転がるように逃げて行ってしまった。一体なんだったのかと、汗を流し、僕は慎太郎くんに顔を向ける。 「顔を出した途端これかぁ。やっぱり隠したままの方が良かったかな」 「お前が原因だろ。勝手か」 「だからちゃんと責任はとるよ。虎介は俺が守るから、安心してね」 そうして今度こそ爽やかな笑みを浮かべる慎太郎くんに、僕はつい顔を赤らめる。 男なのに、なんか恋する乙女みたいで恥ずかしい。 誤魔化すように視線を彼から晒すと、ふと視界に入った生駒くんに首をかしげた。 「生駒くん、どうかした?」 「え?何にもないけど、なんで?」 「いや、なんか……」 辛そうな顔、してた気がしたから……。 そう言いかけて口をつぐむ。 なんだかわざわざ彼に指摘してはいけないような気がしたのだ。 少し間を開けて、なんでもないと首を横に振る。生駒くんは不思議そうな顔をしたけど、特に追求はしてこなかった。 *** 「生駒くん。どうしたんだろ……」 「え?」 お昼休みの時間。 なんとなくいつもの感じで、僕は慎太郎くんと東階段でお弁当を食べていた。 クラスメイトから一緒に食べないかと誘われたけど、なんとなく遠慮してしまった。 なんというか、この時間は慎太郎くんと2人でご飯を食べるのが僕の日常で、それは失いたくないと思ったから。 夏は暑いし、冬は寒いけど、なんとなくこのままがいい。 「優璃がどうかした?」 「ん。……あ、その」 いつの間にか口に出ていた呟きに、慎太郎くんが首をかしげる。 偶々見てしまった生駒くんの表情が気がかりだった。なんだか痛みを堪えているようで、怪我でもしてしまったのかと思ったのだ。

ともだちにシェアしよう!