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日常4

でもその後クラスではいつも通りに見えたし、ただの思い違いかもしれない。 わざわざ慎太郎くんに相談するのも生駒くんに悪い気がして、僕は朝と同様、首を横に振りはぐらかした。 もし彼に何かあったのなら、僕が首を突っ込むより志音くんの方が適任だろう。 「虎介」 「ん?」 名前を呼ばれて、ミニトマトを口に含みながら慎太郎くんを見ると、彼は優しく微笑んでスッと両手を広げた。 「おいで」 「え?」 「虎介を抱っこしたい」 「えっっ!?」 唐突な申し出に驚愕する。 「い、いきなりどうしたの……?」 「ん?だって俺たち“恋人同士”でしょ。だから虎介とイチャイチャしたい」 「こっ……!」 恋人同士……!!! あまりのパワーワードに一瞬呼吸が止まる。 確かに僕たちは互いの思いを告げ、晴れて両思いになれた。 でも恋人だなんて急に言われても、実感がなさ過ぎて狼狽する。 そうか。両思いになったら、それはもうイコールで恋人なのか……。  今まで付き合ったことがないから、どこからが“付き合う”というものなのか分からなかった。 「でもっ、いきなりイ……イチャイチャする、とかは……」 「いいじゃん。今まで我慢してきたんだもん」 「だもん」って!なんだ! こんなに堂々と甘えられると調子が狂う。 はっきりと拒否できなくて、僕は押しに弱いことを強く自覚した。

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