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日常7
「ね。学校帰り?今から遊び行かない?」
「俺たち奢るからさ、ちょっと付き合ってよ」
「……」
うざい。距離近い。タバコ臭い。首に腕を回すな、馴れ馴れしい。
下校途中、他校のヤンキー2人に絡まれた志音は心の中で悪態をついた。
なんでわざわざ男の僕?
虎くんはともかく、僕にナンパしてくるなんて意味分かんない。
確かに女顔だって言われるけど、胸もなければ可憐さも持ち合わせていない。
なんだ?この人らホモなのか?それとも女子高生には声をかけられないシャイボーイかなにか?
「ねぇ、なんとか言えよ。一緒に遊ぼうって」
そうしてさらに距離を縮めてきた。それに堪忍袋が切れ反撃しようとすると、途端相手の体が僕から離れる。
視線の先には僕に回されていた腕を掴む優璃がいた。
突然現れた幼馴染にぽかんとしてしまう。だって優璃は今日、熱が出たとかで学校を休んでいたのだ。それなのに何故、こんなところにいるのだろう。
「あ?なんだよお前!」
「うっせぇな、なんでもいいだろ。つーかナンパしてぇなら都心にでも行ってこい」
面倒そうな優璃に言い返そうとした相手をもう1人が止める。見れば他の下校途中の生徒が数人、こちらの様子を伺っていた。
それに「見せモンじゃねぇぞ!」と怒鳴ったヤンキーくんたちは舌打ちを残しその場を去っていく。ほんと、いい迷惑だよ。
「ってか優璃、なんでいるの?熱は?」
「治った。で、暇だから走ってた」
「いや走るなよ!」
相変わらず本能の赴くままだな……。なんで暇だから走るってことになるの。熱出てたんだから寝てなよ。
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