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日常8

「ま、いいじゃん。そのおかげで俺が助けてやれたんだからよ」 「はぁ?別に優璃なんかに助けられる筋合いないし!」 「でも気をつけろよ。お前、美人なんだから」 「!?」 なにをサラッと言うんだこの幼馴染は。 そして悔しくもキュンとしてしまった僕はなんなんだ! 昔はただのバカ猿だったくせに、ほんと生意気! 「あっ。あれ虎ちゃんじゃね?」 「へ?」 うんうん唸っていた僕が顔を向ければ、確かに虎くんの姿があった。その隣にはシンが一緒に歩いていて、仲よさそうに談笑している。 「って、髪切ってる!かわいい!」 「ムッ」 一気に鼻の下を伸ばし出した優璃にイラッとして、その脛を思いっきり蹴った。 なにさ、さっきちょっとでもドキッとした僕がバカみたいじゃないか。 「イテェ!何すんだ志音!」 「うるさい変態!喋るな近づくな呼吸するな!」 「そんなん死ぬだろ!横暴か!」 そうしていがみ合っていると、向こうから2人がやって来た。 僕らの様子に苦笑いをこぼす虎くんは、さっぱりした髪型で一段と輝いて見える。短い髪の毛が動くたびにヒョコヒョコ揺れて、とても可愛らしかった。 声をかけられると優璃はすぐデレデレして、虎くんが髪を切ったことを褒めちぎり始める。 文化祭の後フラれたとか言って落ち込んでいたの何処の誰だよ、まったく。 「志音、今日は部活なかったの?」 「あぁうん。顧問が出張でいなかったからさ」 シンの質問に返すと、相変わらずの笑顔を向けられた。 というかいつもよりもシンの雰囲気が柔らかい。きっと虎くんのおかげなんだろう。 今まではどこか冷めていたシンも、虎くんにはメロメロということか。

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