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日常10

「いいよいいよ〜!じゃあそのまま手を握り合ってみようか!」 「……はーい。ほら、虎くん」 「へっ、あ、う、うん……」 差し出された手に、僕はおずおずと両手を差し出す。 互いに向き合って手を繋ぐと、興奮した様子の結衣さんが声を上げた。 「もっと距離を!距離を近づけてみて!!」 「……はぁ。いい?虎くん」 「う、うん……」 困ったような顔をする志音くんに頷き、身を寄せ合う。  近づくとなんだか志音くんからいい香りがして、同性なのに照れてしまった。 それから結衣さんにもっともっとと言われて、最終的に体が密着してしまった。その途端、大量のフラッシュを浴びせられる。 「いい!すごくいいわ!!じゃあそのまま座り込んでみ……」 「いい加減にしろ変態」 息遣いが荒くなっている結衣さんに、慎太郎くんが制止をかける。 結衣さんと帰り道であった僕ら、正確には僕と志音くんは、結衣さんに連行される形でまた彼女の部屋に訪れていた(志音くんは昔から結衣さんにロックオンされているらしい)。 そしていつの間にか撮影会が始まってしまっていて、言われるままにポーズを取らされている。 志音くん曰く、断ると泣きつかれたり愚痴をこぼされたりと面倒なことが多いのだとか。 それにしても、これはあまりにも……。 「ったく、よくそれで仕事やってけるよな」 「はぁ!?それどういうことよ!可愛い子がイチャイチャしてる様子とか萌えの極みじゃない!」 「熱弁するなよ。このショタコン」 「ショタコンじゃなくて可愛い男の子が好きなのよ!ちょっと優璃!何か言ってやりな!」 「えぇ!?俺がっスか!?」

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