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日常11
結衣さんに対してビクビクしている優璃くんはなかなかに新鮮だった。そんなに昔された結衣さんからのいじめが酷かったのかな……?
わーわー言い合う3人をきょとんと眺めていると、志音くんが困ったように溜息をついた。
「ほんと、いつまでも騒がしいままなんだから」
「で、でも賑やかな感じでいいと思うよ」
和気藹々とした賑やかさではないけれど、と苦笑いを浮かべると、志音くんは「虎くんは優しいねー」とまた溜息をついた。
でも確かに会うたびに写真を撮られるのは疲れるかも……。しかも結衣さんの要求って、恥ずかしいものばかりなんだよなぁ……。
「……虎くん。よかったね」
「え?」
ふいにそう言われて、僕は首を傾げた。そうすると志音くんは優しく微笑んで言葉を続ける。
「シンと、上手くいったんでしょ?」
「!」
途端、カァっと顔が赤らんだのが分かった。
何故志音くんがそれを知っているんだろう。慎太郎くんが教えたのかな?
まぁ彼にはいろいろと相談にものってもらったし、ちゃんと報告しなきゃとは思っていたけれど。
でもなんだか、自分だけいい思いをして悪いと思う。
志音くんはずっと生駒くんを想っているのに。僕なんかよりずっとずっと苦労して、辛い思いをしてきただろうに。
志音くんが結果どうなりたいかは分からない。分からないけれど、僕はちゃんと言いたかった。
「し、志音くんも、頑張ってね……!」
「え」
一瞬ぽかんとした志音くんは、次にはどこかくすぐったそうな笑みを浮かべた。
「……ありがとう」
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