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喧嘩2

押し問答をする僕らはタオルを互いに押し付けあって一歩も譲らない。 するとその時、下が濡れていたせいでツルッと名塚くんの足が滑った。 「え」 「わぁ!?」 前に倒れてきた名塚くんに巻き込まれ、僕も一緒に倒れこむ。 派手な音を立てて、僕らは地面に倒れこんだ。    頭は名塚くんが手で守ってくれたみたいで痛みはない。 でも名塚くんの胸に思いっきりぶつかったことで、鼻にじわじわとした痛みが走る。 ん。なんか少し温かい何かが垂れて……。 「あ!虎介!鼻血出てる!!」 「え」 反応するより先にマスクを外されてしまった。 僕は反射的に閉じていた瞼をゆっくりと開く。 目の前には名塚くんの顔があって、何故かとても驚いたような顔をしている。 ……というか。なんか、視界がやけにクリアだな? ……あれ?向こうの方に僕のとよく似た眼鏡が転がっているんだが……。 いや、似ているというか、同じ……? ……うそでしょ? 恐る恐る再び視線を前に向けると、相変わらずビックリ顔の名塚くんがそこにはいた。 「……し、師匠、っスよね……?」 「……」 これって、もう言い逃れできないよな……。 僕はつくづく運のない僕を呪いながら、遠い目をして固まっていた。

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