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喧嘩3

名塚くんが先生に伝えに行き、全身ベトベトの関係で帰りのホームルームは免除してもらえた。だから僕たちは未だ体育館前のところにいる。 服はというと、名塚くんがバスケの練習着を貸してくれたのだが、やはりサイズが大きい。 ブカブカのトレーナーにブカブカのジャージ。なんだがいたたまれなくなる。 「おぉっ。ぶかい!かわいいっス師匠!」 「そ、その呼び方になるんだ……」 「だって師匠じゃないっスか!……あ。でも虎介でもあるんだよな?うーん……、俺は一体どっちとして接すれば……!」 頭を抱え出した名塚くんに、僕は苦笑いを浮かべる。 僕的には、師匠としての自分は大分イレギュラーなものなので、できればそちらを消して欲しいんだけど……。 「今まで通り、虎介でいいよ?」 「いや!でも師匠は師匠だから!」 「えぇ……」 何故か譲らない名塚くんは、暫くうんうん唸っていたが、次にはパンッと手を合わせた。 「じゃあ呼び名は師匠で、話し方は虎介との話し方にしよう!」 「え?」 「俺、師匠相手には敬語だったけど、タメ口にする!うん、そうする!」 「……」 なんか、余計ややこしいことになった……。 1人で納得してしまった彼に溜息を吐く。 まぁ何はともあれ早く家に帰ろう。こんな格好でいつまでもいられないし……。 「虎介」 「!」 その時、名前を呼ばれた。それは名塚くんの声でない、よく知った人のものだ。 見なくても、それが誰だかは分かっている。 でも、なんでここに……? 「おぉ、シンじゃん!どうしたんだー?」 呑気に手を振る名塚くん。 その横で僕は、自分の顔がどんどんと青ざめていくのを感じていた。

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