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喧嘩4

「これは、どういう状況かな?」 あはっととびきり爽やかな笑みを浮かべる慎太郎くん。 その一方で僕は石化したようにガチガチに固まっている。 マズイ。これ、完璧見られちゃいけなかったやつだ。 だって僕今ブカブカの服着てて、しかもそれは名塚くんの服だし。 いや、でも考え過ぎかな?だって異性といるわけでもないし、普通これだけで疑われたりとかしないよね? ……疑いはしないけど、嫉妬ならするかも……。 「こんな時間になんで2人きり?しかもなにその格好」 「いや、これには理由があって……」 「理由?それは是非聞きたいなぁ。こんなところで、わざわざ、服を借りないといけなくなった理由」 ナチュラルに毒を吐く慎太郎くん。いつもの爽やかなキャラはどこに行ったのか……、生駒くんが黒シン様と呼んでいる姿を隠しもしない。 「虎介は流されやすいんだよ。もっと自覚を持って欲しいな」 「え。いや、だからこれは……っ」 「目を離すとすぐにこれだ。そんなに遼也がいいわけ?」 「っ、な、なんでそうなるのっ?僕は別に……!」 2人の会話に名塚がぽかんとする中、どんどんと流れが悪い方へと向かっていく。 苛々している慎太郎に、流石の虎介も反論した。 一方的に決めつけないで欲しい。なんでそんなことを言うんだ。酷いじゃないか。 何か僕が言うよりも先に、慎太郎くんは自嘲しながら乱暴に言葉を吐き捨てる。 「どうせ捻くれた俺なんかといるより、遼也といた方がいいんだろうけど」 「!」 その言葉に、カッと体が熱を帯びた。 これはあまり経験したことのない感情だけど、フツフツと湧き上がってくるのは明確な怒りだ。 「……なんで、そんなこと言うの?」 「え?」

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