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喧嘩6
「言い過ぎた……」
頭を抱えてテーブルに突っぷす慎太郎に、対面にいる生駒と志音は呆然とした。
「ついカッとなって、虎介に酷いこと言った……。絶対嫌われた……」
「……これは、かなりきてるね」
「あのシン様が落ち込んでいる……。超レアだ」
漫画を読んでいた生駒は貴重な慎太郎の姿に写メを撮る。
今3人は生駒の自室にいた。
メールで慎太郎から「虎介が何か言っていなかったか」と聞かれた志音が、呼び出しそのまま生駒の部屋へと押しかけたのだ。
それからずっと撃沈している慎太郎は、死にそうな声で今日の出来事を話した。
2人ともこんなに沈んだ慎太郎は今までに見たことがない。
生駒が携帯で写真を撮っても無反応。これは相当ダメージを受けているようだ。
オレンジジュースを飲んでいた志音は、そのグラスをテーブルに置き、体操座りになる。
すっかりしおしおになっている慎太郎に憐れみがないこともないが、志音にとって虎介は大切な友人だ。完全に慎太郎に同情することはできない。
「確かに虎くんも、いくらワンコくん相手だからって無防備すぎるかもね。でも虎くんの話はちゃんと聞いたの?一方的に決めつけたんじゃない?」
「別に、決めつけたわけじゃ……」
「思っても見なきゃ、苛立ったりしないでしょ」
「うわ、正論」
きっぱりと言う志音に、生駒が苦笑いを浮かべる。
あの慎太郎が反論できなくなるのは志音相手くらいだ。ズバズバ正論を突きつけられ、甘えを許されない。
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