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甘露

「え、お泊り?」 「う、うん」 少し驚いた様子の碧兎に、虎介は炒め物をしながら頷いた。 なんでも来週の土日、慎太郎くんの両親が家にいないらしく、よかったら来ないかとお誘いを受けたのだ。 こそこそと隠れるようでいたたまれないが、誘ってくれたのは嬉しかったし断る理由もない。 「あ!例の慎之介って男か!?そいつは信用していいんだろうな!?」 「慎之介じゃなくて、慎太郎くんね…。信用って、ただのお泊りでしょ。この前うちに泊まってもらったこともあるし」 「碧兎!お前心配じゃないのかよ!?」 「そういうのはお節介って言うんだよ父さん」 わざわざ大袈裟な父さんに汗を流す。 父さんは過保護すぎるのだ。どう考えても彼のは男子高校生に対しての扱いではない。    まぁそれは、今までいろいろと心配をかけるようなことをした僕のせいでもあるのだけれど……。 「それにしてもお泊りかぁ。ついにねぇ」 「え……ついにってなんだ!?」 碧兄が何かを悟ったように呟く言葉に、父さんが敏感に反応する。 碧兄にはなんでも筒抜けな気がして、僕はダラダラを汗を流した。 父さんの問い詰めと、碧兄の含みのある笑み。 その日の家は居心地が悪くて仕方がなかった。

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