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甘露5

太腿を擦り合わせてもじもじする虎介を、慎太郎は楽しそうに眺めて「それに……」と腕を伸ばす。 虎介の腰に手を添え引き寄せた慎太郎は、そっと彼の耳元で囁いた。 「こんなこと、恋人しかできないでしょ?」 「っ……」 背中にピリピリッと痺れのようなものが走る。 なんか、ゾクゾクする。僕の体、変だ。 それにこんな慎太郎くん初めてで、どうしていいのか分からない。 「ぁ……。慎太郎、くん……」 破裂しそうなほど高鳴っている鼓動を感じながら、虎介は回された腕に手を添えた。 その時、急に鼻が痒くなって咄嗟に俯く。 「はくちゅっ」 「え。今のくしゃみ?かわいい」 雰囲気も何もないくしゃみにカァッと赤面すると、今度は背中に両腕を回されギュッと抱きしめられた。 慎太郎くんからお風呂上がりのいい香りがしてドキッとする。伝わる熱が心地よくて、ホッと息を吐いた。 「ごめん、寒かったね。あったかくなろっか」 「じゃあ、下着ても……」 「だーめ。このまま」 「う……」 彼は優しいのか意地悪なのかよく分からない。 でもすぐ近くから聞こえる声はひどく甘くて、なんだか抵抗する気が起きなかった。 慎太郎くんは僕の髪の毛に顔を埋めた。 暫くそのままだったが、次には一層強く抱きしめられる。 「あー……。……もう、いい加減限界」 「……ぇ?」 「ねぇ。このまま、やってみない?」 「やる、って……」 そこまで言って僕は息を呑む。 顔を上げて見つめ合った彼の目が、ひどく熱を帯びていた。 その瞳に再び背中にピリピリと痺れが走る。 固まってしまった僕に彼はふわりと優しい笑みを浮かべて、チュっとおでこにキスをした。

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