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甘露13
「虎介……へいき?痛く、ない?」
こくこくと首が振られ、色素の薄い髪の毛が揺れる。
そこから香る甘い香りに、さらに体が熱くなった。
吐息交じりに、俺はその名前を囁く。
「……虎介」
無自覚で煽ってくる虎介に、再びキスを。
口の中に入り込んで舌同士を絡ませ、吸い上げ、それらと同時に腰を徐々に動かしていく。
「ん、あ、あ、そ、そこ、んん……っ」
蕩けたような顔で甘く喘ぐ姿に、だんだん限界が近づいてくる。舌を絡ませあって、小さな手を握りしめて、愛おしくて堪らない虎介と繋がっている事実に、何故だか視界がぼやけた。
「虎介……虎介っ……!」
「しん、たろうっ……す、きぃ……っ」
「ッ……や、ばいッ……!」
視界が白くなり、一気に快感が弾けた。
虎介も達したらしく、体を痙攣させていた。
そしてこちらと目が合うと、ほわぁと柔らかい笑みを浮かべる。
「慎太郎くん。ぼく、しあわせだよ」
「っ……」
その言葉に、どうしようもなく愛しい気持ちが込み上げてくる。
優しく頬を撫でれば猫みたい擦りついてきて、そんな甘えた態度に口元が緩んだ。
「……俺も、幸せすぎて死んじゃいそう」
虎介。
俺の世界を変えてくれた人。
誰にも渡したくない、世界一大切な人。
こんなどうしようもない俺を、愛してくれる人。
これ程の幸福感を感じたことなんてなかった。
心が満たされ過ぎて、苦しいくらいだ。
抱き寄せて、その存在をしっかりと確かめる。
「……なんだかもう、いろいろいっぱいだ」
「へへ。ぼくも」
天使みたいに笑う虎介に、俺も心からの笑みを浮かべる。
引き寄せられるままに、二人は口付けを交わした。
この時間が永遠になればいい。そう考える一方で、この先の人生を虎介と共に歩みたいと強く感じた。
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