165 / 216

甘露13

「虎介……へいき?痛く、ない?」 こくこくと首が振られ、色素の薄い髪の毛が揺れる。 そこから香る甘い香りに、さらに体が熱くなった。 吐息交じりに、俺はその名前を囁く。 「……虎介」 無自覚で煽ってくる虎介に、再びキスを。 口の中に入り込んで舌同士を絡ませ、吸い上げ、それらと同時に腰を徐々に動かしていく。 「ん、あ、あ、そ、そこ、んん……っ」 蕩けたような顔で甘く喘ぐ姿に、だんだん限界が近づいてくる。舌を絡ませあって、小さな手を握りしめて、愛おしくて堪らない虎介と繋がっている事実に、何故だか視界がぼやけた。 「虎介……虎介っ……!」 「しん、たろうっ……す、きぃ……っ」 「ッ……や、ばいッ……!」 視界が白くなり、一気に快感が弾けた。 虎介も達したらしく、体を痙攣させていた。  そしてこちらと目が合うと、ほわぁと柔らかい笑みを浮かべる。 「慎太郎くん。ぼく、しあわせだよ」 「っ……」 その言葉に、どうしようもなく愛しい気持ちが込み上げてくる。 優しく頬を撫でれば猫みたい擦りついてきて、そんな甘えた態度に口元が緩んだ。 「……俺も、幸せすぎて死んじゃいそう」 虎介。 俺の世界を変えてくれた人。 誰にも渡したくない、世界一大切な人。 こんなどうしようもない俺を、愛してくれる人。 これ程の幸福感を感じたことなんてなかった。 心が満たされ過ぎて、苦しいくらいだ。 抱き寄せて、その存在をしっかりと確かめる。 「……なんだかもう、いろいろいっぱいだ」 「へへ。ぼくも」 天使みたいに笑う虎介に、俺も心からの笑みを浮かべる。 引き寄せられるままに、二人は口付けを交わした。 この時間が永遠になればいい。そう考える一方で、この先の人生を虎介と共に歩みたいと強く感じた。

ともだちにシェアしよう!