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甘露14
朝起きると、僕は慎太郎くんの腕の中にいた。
密着している体に、顔を真っ赤にさせる。
昨日のあれやこれやの記憶を思い出して、僕は彼の腕の中で1人悶えた。
なんかいろいろ恥ずかしいことを言ってしまったし、見せてしまったような……。
自分の失態に頭を痛ませながら、なんとなく辺りを見渡す。
慎太郎くんの部屋はとても広いのに物は少なく、生活感をあまり感じない。
どこか寂しさを感じる部屋だ。
今度は慎太郎くんに視線を向ける。
僕をぎゅっと抱きしめる彼は、まるで僕に置いていかれないように、一人ぼっちにならないように繋ぎ止めているみたいだ。その姿はどこか幼く思えて、胸のあたりが締め付けられる。
慎太郎くんは、寂しかったのかな。
人気者の彼だけど、どこかではいつも独りだったのかもしれない。
だから、人の温もりに焦がれていたのかもしれない。
「ん……」
「!」
目の前の瞼が震え、やがてゆっくりと開かれた。
目覚めた慎太郎くんは、目が合うとほわんと微笑んだ。その幼い笑みにドキッとする。
「お、おはよう慎太郎くん」
「……うん。おはよう」
どこまでも甘い声で挨拶を返され、おでこにキスを落とされる。
抱擁が強くなったと思ったら、頭上で彼が笑ったのが聞こえて僕は顔を上げた。
「どうしたの?」
「んー、なんか。好きだなぁって思って」
えへへ、と笑う慎太郎くん。
なんとなく、こんな彼を見られるのは自分だけなのだと思って嬉しくなった。
こういうのを、独占欲というのだろうか。
感じたことのない感情に、少し恥ずかしくなる。
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