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甘露15
「ねぇ、虎介」
「ん?」
楽しそうにニコニコ笑っている慎太郎くんはなんだか新鮮だった。
可愛いな。なんて思いながら言葉の続きを待っていると、彼は僕の手をプニプニと揉みながら口を開く。
「昨日さ。俺のこと、慎太郎って呼んでくれたよね」
「……え?」
唐突な発言に、僕は目を瞬かせる。
言ったような、言ってないような……。
正直昨日はいっぱいいっぱいだったので、自分の言ったことを全部覚えていない。
おろおろする僕に、慎太郎くんはなおも眩しい笑みを浮かべる。
「なんだか。虎介にされたことって、全部が特別だ」
「特別?」
「うん。胸が締め付けられて、あったかくなる」
その感覚はなんとなく分かる気がした。
僕も慎太郎くんといると、胸がぎゅっとなって、ポカポカする。
そうか。慎太郎くんも、同じなのか。
なんだか嬉しくて、僕も顔を綻ばせた。
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