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不穏なもの

「お帰りなさいませ!……って、あ!君ってこの前の!」 「ど、どうも……」 身を縮こめて挨拶をすれば、目の前の女の子……いや、男の子は嬉しそうに目を輝かせた。 今日僕は、生駒くんに頼まれて再びメイド喫茶に訪れていた。 なんでも志音くんに届け物があるけれど、生駒くんは急用で届けることができなくなったらしい。 嘘か本当かは定かではないが、頼まれてしまっては断るわけにもいかない。 事情を話すと控え室に通された。 中に入ると、僕に気付いたメイドさんたちがグイグイ詰め寄ってくる。 「子猫ちゃんだ!どうしたのっ?」 「またメイドやってくれるとかっ?」 「あ!もしかして正式にバイトする感じ!?」 「い、いやっ、僕は、えっと……」 凄い勢いのみんなに顔を引きつらせていると、「虎くん?」と馴染んだ声で名前を呼ばれた。 見れば驚いた様子の志音くんと目が合う。 その瞬間。僕は悲鳴のような声を上げていた。 志音くんが!メイドさんになっている!! その愛らしさにズギューン!と胸を撃ち抜かれた虎介は、赤らめた頬を両手で包み込む。 白く柔らかな髪は軽くカールしていて、よりふんわりさが増している。その髪から覗く小さな顔も、すらりと伸びた手足も、とても同性とは思えないほど愛らしい。 まるでその姿は天使のようで、彼の周りがキラキラと輝いているようにさえ見えた。 なんだかんだ言って、志音くんのメイド姿は初めて見るのだ。 そのあまりの可愛さにただただ「可愛い!」を連呼する虎介に、志音は心の中で「キャピキャピしてる虎くんが可愛い」としみじみ感じていた。

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