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不穏なもの4
「な、なに……?」
「……何か違うなぁって思ってたんだけど、そういうことねぇ。ふぅ〜ん」
「だ、だから何が……!?」
困惑する虎介を楽しそうに見つめながら、志音は言葉を続けた。
「虎くん。なんか妙に色気が出てるんだよ」
「………はい?」
ぽかーんとする虎介に、志音はニヤニヤと笑みを浮かべながら身を寄せた。
そしてその耳元でそっと囁く。
「シンと、やったんでしょ?」
「?」
言われた虎介は「やったって、何を?」ときょとんとしていたが、やがて何かを察したようでカァァアッと顔を赤く染め上げる。
その光景を眺めていた志音は、さらに笑みを深めてゆらゆらと体を左右に揺らした。
「そっかぁ〜。やっぱりそうなんだぁ〜」
「……っっ!いやっ、そのっ、なんっ、……ぁ、あ!僕っ、よ、よ、用事!用事あるの忘れてた!ケーキありがとう!じゃ、じゃあ!!」
転がるように出て行く虎介に周りが驚く中、志音はなおもニヤニヤしていた顔を今度は優し気な笑みに変えて、ポツリと呟く。
「……よかったね。虎くん」
僕も、少しくらいは頑張らないとな〜。
そんなことを思いながら、届け物で渡された袋から中身を取り出す。
出てきたのは青色の缶のハンドクリームだった。
そういえば、最近手が荒れるのがどうこうって話をしてたっけ。
照れたように笑みを浮かべながら、志音は愛おしそうに青い缶を見つめる。
今日12月3日は、四宮 志音の誕生日だ。
優璃のやつ。恥ずかしいからって人伝いにプレゼント渡してくるの、相変わらずだな。
虎くんに今日誕生日なの教え忘れたけど、あとで怒られちゃうかな。
きっとシンに教えられちゃうだろうし。
シンには1日早く学校で手鏡を貰った。
女の子じゃないんだからとツッコんだが、流石に選ぶものが洒落ていてデザインも可愛らしい。世渡り上手ならではのプレゼント。
それに加えて、優璃のプレゼントは不器用さが滲み出ている。
僕が言ったのそのまんまじゃん。
なんていちゃもんを付けながらも、その表情はひどく穏やかだ。
大事そうに持ったその缶を、志音は再び袋にしまった。
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