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不穏なもの12

その左の後ろ肩にはタトゥーが入れられている。 羽のような模様のそれを、無意識に指でなぞった。 そうすると逹己から視線を向けられ、彼は笑みを浮かべる。 「碧兎、これ好きだよな」 そう言いながら顔を近づけて来て、軽く唇同士が触れ合った。 そっと離され、俺は僅かに眉を寄せる。 「いきなりなに」 「お前が弟くんばっかだから、嫉妬」 「……逹己って、変なとこで子供じみてるよね」 この相手にはこちらの考えなど筒抜けということか。 溜息吐くと、相手がおもむろにタバコを吸おうとしたので直ぐに取り上げた。 「コラ。ここで吸わない」 「へいへい。じゃ、こっち」 そうしてまたキスを落とされ、今度はさっきより深く口付けられる。 そのままベッドに押し倒されてしまったので、また「コラ」と逹己の頭を叩いた。 「大学、行くんだろ」 「俺が車出せばいい」 「風呂入りたいの。重い。どいて」 そう言って無理やり起き上がり、風呂場に向かう。 彼の一人暮らししているこの家にもすっかり慣れた。 そんな頻繁に泊まったりはしないが、どこか居心地の良さを感じるのだ。 こっちに引っ越して来て今の大学に編入した俺は、他者に対して深入りはしないというスタンスの逹己と気が合い一緒にいることが多くなった。 彼といると気が楽で、居心地の良さを感じて、側にいることが増えて……。 何がきっかけだったのだろう。 あれは初夏の頃。 何の前置きもなしに、口付けを交わしていた。 きっといつの間にか、そういう空気感が形成されていたんだ。 一見真逆の相手だけれど、どこか自分と似ていると感じて互いに求めあっていたのかもしれない。 別に恋人でも、セフレでもない。 明確に決まっていない関係のまま。 それでいいと思う。 自分たちは他者に深入りはしないスタンスで今まで生きてきたのだから。

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