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不穏なもの13

「……あー、マジでまいった」 「何が」 着替えながら心底困ったように呟く逹己に、風呂上がりの俺は首をかしげる。 まだ濡れている髪を見て肩にかけてあったタオルを取った逹己は、俺の髪を拭き始めた。 変なところで細かいやつだ。 「それがさ。朔弥っていう高校時代つるんでたヤツがいるんだけど」 「朔弥って……、この前電話してた子?車で迎えて来て欲しいとか頼まれてたよね?」 「あー、そんなこともあったな……」 その時は世話の焼けるやつだと溜息をついていた。 それなりに面倒を見てあげてるようで、弟分みたいなものなのだろう。 「その朔弥くん?がどうしたの」 「んー……。なんか、変なこと考えてないかって心配でな」 「変なこと?」 話しの流れが分からずに首をかしげると、正面の逹己は無言で眉を寄せた。 いつもクールな彼にしては珍しい表情。 逹己の心配していることは、それ程にマズイことなのだろうか。 「あいつさ、興味持っちまったらしいんだよ」 「……何に」 「朔弥の発言にキレて怒鳴りつけて来た少年に」 「……は?」 益々話が見えない。 自分を怒鳴りつけてきた相手に興味を持っている? そしてそれを逹己は心配しているのか? 「その興味持たれた子。一見大人しそうな感じでさ。あとスゲー美人」 「……少年、なんだよね?」 「おぉ。でもあれは性別とか関係なくなるレベルで綺麗だな」 「へぇ。逹己がそこまで言うって凄いね」 可能性のある人物が頭の中に浮かんできたが、まさかと思いすぐに思い直す。 でも虎介のようにそんな綺麗な男の子がいるというなら是非会ってみたいものだ。 「で、その子がダチのことを悪く言った朔弥にキレてさ。凄い威圧感だったぞ。正直ビビった」

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