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不穏なもの14
そこまで言って髪を拭くのをやめ、逹己はキッチンに向かう。
どうやらコーヒーを淹れ始めたようで、俺は朝食作りに入った。
「じゃあ見た目とのギャップがあったその子に、朔弥くんは興味を持っちゃったわけ?」
「それもあるけど……。その子のダチってのが、俺らのダチでもあるんだ」
「ふーん。高校時代のとか?」
「そうそう。で、そいつって一匹狼な感じというか、誰にも心を許さないところがあるわけよ」
俺らにもどこか一線引いてたしな。と小さく付け加えられる。
どうやらかなり、その相手のことは気にかけているようだ。
「それで、そいつがどうしたわけ?」
「……優しかったんだよ」
「え?」
「その男の子に向ける目とか声とかが、今まで見たことないくらい優しかったんだ」
真剣な顔つきでそう言う逹己。
それだけで、その一匹狼くんがした行動が相当意外だったのだと察しがついた。
「……つまり。朔弥くんも意外に感じて、心を許されてる男の子に興味を持ったと」
「あぁ。朔弥のやつ、やたらシンに絡むところあるからな」
「シン?」
「あー、そのもう1人の知り合いだよ」
「ふーん。で、その興味持ったことの何が心配なわけ?」
「……なんとなく」
「え?」
「なんとなく、マズイことが起こりそうな気がしたんだ」
シンがその子を連れて帰っていくのを見ていた時、隣で朔弥は小さく笑った。
ちらりと顔を見れば、何か胸騒ぎがするような笑みを浮かべていたのだ。
まるでその目は獲物を捕らえた肉食獣のような、そんな獰猛な光を宿しているようで……
『シンのヤツ、面白そうなの捕まえてんじゃん』
なんだか不穏なモノが迫っているような、そんな気がしてならなかった。
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