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幸運なもの
日曜日。朝ご飯とお父さんのお弁当を作っていると、ガチャリとリビングのドアが開き碧兄が帰って来た。
それに僕が「おかえりー」と声をかける中、父さんは読んでいた新聞をヒラヒラさせて意地悪そうな顔になる。
「朝帰りか碧兎〜。ほどほどにしろよ〜」
楽しそうな父さんを「あーはいはい」と軽く流す碧兄。
碧兄はこっちに引っ越して来てから偶にこういう日がある。
わざわざ何をしているのかなんて聞いたこともないが、やっぱりそういうことなのかな。碧兄も父さんの揶揄いを否定しないし。
こういう碧兄を見ると、とても大人って感じがする。偶にタバコの香りがする時もあるし。
凄いなぁ。なんだかカッチョいい。
父さんのお弁当が完成して蓋を閉めていると、不意にカウンターに置いていた僕の携帯がピコンと鳴った。
見れば差出人は生駒くんで、僕は首を傾げながらメッセージを開く。
志音くんへの届け物の件では、昨夜お礼の連絡があったはずだけど……。
〈今日って予定空いてるー??〉
その内容に「えっ」と声を漏らした。
なんだろう。彼と出かけた時って、あまりいい思い出がないのだけど……。
まさかまた何か企んでいるとかじゃ……。
〈よかったらお茶しないっ?志音がこの前行ったカフェでケーキの割引券貰ったらしいんだよ!〉
「ケーキ!!」
「ん。どうしたー虎介?」
「あ、いや、はいこれっ、お弁当」
「おう、サンキュー。この弁当の為に俺ガンバル!」
「はいはい、もう時間やばいでしょ。早く行った行った」
碧兄が急かすのに「碧兎冷たい!」と抗議する2人から視線を外し、返信する。
幸い今日は暇だし、ケーキが食べられるなら断る理由はなかった。
昨日の今日で志音くんに会うのは少し気まずいけど、ケーキには変えられない!
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