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幸運なもの2
是非行きたいと返事をすると、生駒くんから1時に駅前でと連絡があった。
出かけていく父さんを見送って、ウキウキしながら自分用の朝食を用意する。
「碧兄はもうご飯食べた?」
「うん。ほんとはそのまま大学行く予定だったけど、家に忘れ物したから取りに来たんだ」
そう言って部屋に行こうとした碧兄は、リビングを出る前にこちらを振り返る。
「なんか虎介、ご機嫌だね」
「えへへ。今日午後友達とケーキ食べに行くんだ〜」
「あぁ、なるほど。気をつけて行っておいで」
「うんっ」
この後は家の掃除と洗濯をして……、そうしていればいい時間になるだろう。
「じゃあ、俺も行ってくるね」
「いってらっしゃーい」
碧兄が出かけていくと、外で車が走り出す音がした。
もしかして、誰かの車に乗って来たのかな。
僕は父さんのお弁当の残りのおかずとご飯とお味噌汁をテーブルに並べる。
今日のお弁当はちょっとした遊び心で、おにぎりの中に大きな唐揚げを入れておいた。
父さん驚くかなー、なんて考えてニヤニヤしながらご飯を食べる。
窓から外を見ると、綺麗な青空が広がっている。
今日は布団も干してしまおう。その時にみんなの部屋も掃除して、トイレ掃除もしてしまおうか。
なんだか考えていることが主婦みたいで笑えてきたけど、バイトを許されてない僕は家事しかやれることがない。
碧兄は友達に誘われたとかで、お洒落なレストランでウエイターをしている。
引っ越す前は家庭教師とか塾のバイトもやっていた。
本当にかっこよくて、できる男って感じ。
落ちこぼれの僕なんかとは大違いで、同じ血が流れているとはとても思えない。
「……はっ。い、いけないいけない……!」
勝手に沈んでいる自分に気づき、ブンブンと頭を振った僕は大きな唐揚げを口一杯に頬張るのだった。
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