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幸運なもの4

万が一引かれちゃったら、僕はもう立ち直れない。この世から消えてしまいたくなる。 これが惚れた弱みというやつなのか……。 どうしよう。今更帰ることなんてできないし……。 そんなことをグルグル考えているうちに、いつの間にかカフェに辿り着いてしまった。 中に入り、早速それぞれ注文する。 生駒くんはチョコレートケーキ。志音くんはチーズケーキ。慎太郎くんはモンブランとそれぞれ頼んで行き、僕の番が回ってきた。 僕はあわあわ追い詰められて、結局「ショートケーキを1つ……」と答える。それに生駒くんと志音くんが驚ているのが分かった。 店員さんがいなくなってから、目をパチクリさせていた2人が僕に問いかけてくる。 「どうした?具合悪いのか?」 「お金があんまないとか?」 「あ、いや、その……」 あからさまに心配されて、言葉を流しながら慎太郎くんをチラ見する。 彼は不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。そのせいで目が合ってしまい、咄嗟に逸らしてしまう。 そんな僕らを見ていた志音くんが、ポツリと尋ねてくる。 「え。もしかして言ってないの?」 それにギクリと体を硬直させた僕に、頭のキレる2人は察してしまったようだった。 途端ニヤニヤされ始め、僕は居心地悪く体を縮こませる。 「なんで?言えばいいじゃん。こんなこと知っても、シンは引いたりしないって。……たぶん」 「今たぶんって言ったぁ!」 「いや、絶対絶対。……始めちょっと、いや大分驚く程度?」 「なんで保険かけるみたいな言い方するのさぁ!」 志音くんのまったく安心させられない言葉に涙目で言い返す。 嘘でも大丈夫だと言い切って欲しいよ! というか実際志音くんって、そんなに引いたの!?

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