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幸運なもの9

なんだ?一体何が起きて…… グラグラする……。 意識が、持っていかれそうだ……。 「お。効いてきた?」 「っ、なに、が……?」 「睡眠薬」 「!?」 驚愕に固まる。 睡眠薬。そんなものをいつ…… まさか……この飲み物…… 襲いかかる眠気に抗うこともできず、重い瞼は下がっていく。 なんで……こんなこと…… やがて体の力が抜けて、体を支えていた腕がカクンッと脱力した。 そのまま横に倒れ込んだ虎介は、ぼやける視界の先に朔弥を見る。 変わらず無邪気に笑う彼。 その心は全く読むことができない。 「どういう……つもり……」 「んー?まぁちょっとなー。かわいこちゃんに協力して欲しくって」 「ぇ……?」 歩み寄ってきたと思えば、横抱きに抱え上げられた。 移動し、ベッドに寝かされる。 頭がふわふわとして、上手く回らない。 眠ったらダメだと思うのに、意識はどんどんと遠のいていく。 「しん、たろ……」 無意識に呼んだ彼の名前。 迷惑なんかかけたくないのに、何故求めるようなことをしてしまうのだろう。 強くなる眠気にこれ以上抗うこともできず、虎介はフッと意識を手放した。

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