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幸運なもの10

慎太郎は今日、偶々駅で生駒たちと合流したわけではない。 前もって志音から連絡をもらっていたのだ。  志音なりの気遣いなのだろう。 慎太郎は予備校を一旦抜け出して合流したため、解散後は(まじめに?)予備校に戻り授業を受けていた。 その授業も終わり帰路に着いた8時頃。 不意に、携帯に着信が入った。 そこには【碧兎さん】と表示されている。 碧兎さんとは、以前泊まらせてもらった際に連絡先を交換していた。 可愛い弟が何かと心配なのだろう。 虎介が何かあった時は連絡してと交換した際には言われていた。 それが向こうからかけてくるなんて。 どうしたのだろうか。 嫌な予感がする。 この胸騒ぎはなんなのだろう。 慎太郎は一度息を吐いて、通話ボタンを押した。 「……碧兎さん。どうかしましたか?」 『あぁごめん……。あの、虎介って今一緒かな?』 「え?いえ……、4時頃には解散しましたけど……。まだ帰ってないんですか?」 『うん……。いつもなら、ご飯作って待っててくれる時間なんだけど……』 「連絡って……」 『繋がらない……。まず遅くなるなら虎介の方から連絡が来るはずなんだ……』 ドクドクと、心臓の音がうるさくなる。 碧兎さんも、少なからず動揺をしている様子だった。 嫌な予感がする。 「あの、俺、今からそっちに行っていいですかっ?」 咄嗟にそう決めたのは、何か理由があるわけでもなかった。 ただ、行かなければと思った。 このままでは、なんの手がかりもない。 やたら感じる胸騒ぎが、ジッとしていることを拒んでいる。 彼の返事もろくに聞かないまま、慎太郎は勢いよく駆け出していた。

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