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幸運なもの17

床に蹲る両者に、仲裁をした逹己は溜め息をつく。 まったく。この2人はいつも手が焼ける。頭痛の元だ。 これまでも何度か朔弥がシンを挑発したことはあったが、一度もシンが本気になったことはなかった。 それなのに今回はまんまと引っかかり、剰え我を忘れるとは……これは相当虎介くんを溺愛していると見える。 しかし、だったら尚更、挑発に乗るべきではない。 なんとか痛みを堪えて立ち上がった慎太郎に、腕を組んだ逹己は静かな、それでいて凄みのある声をかけた。 「このバカ。暴走する前に、まずやることがあんだろうが」 「っ……タツ、さん」 「一々取り乱してんじゃねぇ。そんなんじゃ、大切なモン何も守れねぇぞ」 我に返った慎太郎が咄嗟に虎介を見れば、すでに碧兎が彼の元に行っていた。 慎太郎も急いでそっちに向かう。 それを見届けた後、未だに床で蹲っている朔弥(こちらの方を強く殴ったせいだろう)の首根っこ掴んで起き上がらせる。 「さて、バカサク。……話を聞かせてもらおうか?」 その冷徹なまでの笑みに、ヒェーと朔弥は悲鳴を上げる。 先程は慎太郎から殺気をバンバンに向けられて飄々としていたというのに、余程逹己が恐ろしいということなのだろう。 朔弥にはまだ逹己と出会ったばかりの頃、喧嘩をふっかけて半殺しにされた経験があった。 体はしっかり覚えているということか。 この人に自分は叶いっこないのだ、と。

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