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幸運なもの18

瞼を開けると、天井が見えた。 しかし先程のものではなく、よく見知った天井だ。 そこで自分はまた眠ってしまっていたのかと思い至る。 そしてその間に家まで連れられて来たようだ。 連れられてって、誰にだろう。 朧げな記憶には、こちらを見て瞠目する慎太郎くんの姿があった。 「?」 その時ふと、人の気配に気が付いて顔を横に向ける。 耳元で聞こえる寝息。 ベッドに上体を倒し、頬をシーツに埋めている。 いつもよりもその寝顔は幼くて、でもいつか見た時の幸せそうな表情ではなく、どこか苦しそうな彼。 そうか。やっぱり助けに来てくれたんだ。 申し訳なくて、でも、心がポカポカする。 嬉しいと感じる。 僕はそっと彼に顔を寄せて、小さくその名前を呼ぶ。   「!!」 その途端、ガバッと勢いよく起きた慎太郎くんに、僕は驚き体を揺らした。 「しん、たろ……?」 「っ、虎介……!大丈夫っ?怪我とかないみたいだけど、睡眠薬盛られたんだろっ?何か副作用とか……!」 起きるなりワタワタと言葉をまくし立てる慎太郎くん。 そんな余裕のない彼の様子に、ついクスッと笑いが溢れた。 それにポカンとする慎太郎くんに、僕はごめんと謝りまた笑う。 力のない手に喝を入れて、彼の頬にそっと触れた。 「ありがと。ぼくは、へいきだよ」 「っ、……ごめん、虎介。俺……」 顔を歪める彼は、ひどく悲しそうで。 なんだか僕の胸もきゅっと苦しくなるみたいだ。 彼にそんな顔をして欲しくなくて、でも何を言えばいいのかとか、回らない頭ではよく分からない。 だから、へにゃりと笑ってみた。 彼にも笑って欲しかったんだけど、僕を見たら、その瞳からポロリと雫が零れ落ちる。 「え。あ……ご、ごめん。な、泣かせるつもりなんてなかったんだけど……。ぼく、なにかしちゃった?あぁ、どうすれば……」

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