頬に添えた手で、溢れる涙を慌てて拭う。 ひどいことを言ってしまっただろうか。 それとも、どこか痛いとか。 でも彼が痛くて泣いてしまうなんて考えづらいし、えっと、えっと……。 「な、泣かないで……、しんたろう……」 情けない声でそんなことしか言えない僕。 慎太郎は身を乗り出し、体を起こした僕に抱きついてきた。 こんな時でさえ彼の温もりに心地よさを感じていると、消え入りそうな声で慎太郎は言う。 「俺きっと、もう虎介なしじゃ、生きていけない……」 「……」 もしかしたら、慎太郎は誰よりも繊細なのかもしれない。 失うことが怖くて、ふとした途端にひどく脆くなる。 なんだかポロポロ涙を流す慎太郎が、心底愛おしく感じた。 守りたいと、強く感じた。 「……なら、ずっと一緒にいるよ」 「……っ」 その背中に手を回して、上を向く。 きっと慎太郎はずっと不安なんだ。 だから、怖いんだ。 そんな彼を安心させたくて、僕は笑う。 君のために、笑う。 「側にいるよ。慎太郎」 そう言うと、やっと彼は笑ってくれた。 互いに顔を寄せ、優しいキスを交わす。 気持ちいい。 とびっきり甘くて、少し涙の味でしょっぱい。 「こすけ……好きだ。大好き……」 「ん、ぅ……僕も…しん、たろ……」 君が、一緒に苦しんでくれてる。 痛みや苦しみを分け合えるから、僕はもう、怖がったりしないよ。 君がいるから、僕はもう自分の境遇を恨んだりしない。 自分は不幸な人間だって、ずっと思っていた。 でも、今は違う。 僕は、不幸者なんかじゃない。 ありがとう。 僕の手を取ってくれて。独りぼっちの世界から、連れ出してくれて。 君と出会えて、本当に良かった。 僕は、この上ない幸せ者だ。