206 / 216
番外編 優璃・志音
「あー誰だよ今日晴れるって言ったやつー!」
「なに、僕のせい!?天気予報のせいじゃん!確かに降水確率30%だったけど!」
「それ晴れじゃねーじゃん!」
「残り70に賭けてたの!」
不運にも土砂降りの雨。
そんな中で、生駒と志音は相変わらずワーワー言い合いをしながら道を走っていた。
「お!あそこ雨宿りに使えるぞ!」
そう言って逃げ込んだお店の前。
そこに並んで立ち、びしょ濡れの体を見下ろして溜息をつく。
お店はシャッターが閉められていて、空いている時は何を売っているのか思い出せなかった。
優璃との帰り道。
相変わらず言い合いばかりだけど、この幼馴染が隣にいると、同じ景色を見ているはずなのにやけに世界が広く感じた。
淡く彩られた空間に、2人きり。
指先が、少しぴりぴりする。
「あー、こりゃ速攻で風呂だな」
そう言って頭を振り犬みたいに水を払う優璃。
昔はボッサボサの黒髪だったけど、今ではちゃっかりセットしてるし、ミルクティーみたいな色に染めてる。
始めてその髪を見た時は、背伸びしてる感があって散々バカにしてケラケラ笑った。
でも、それから少しして一気に背も伸びて、逞しくなって。
案外、様になってる気がしないでもない。
もしかして、また背が伸びたかな。
隣に並ぶ幼馴染をチラリと見る。
その濡れた横顔に、不覚にもドキリとしてしまった。
なにさ、バカ優璃のくせして。
なんか生意気。
ともだちにシェアしよう!