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新田の座っている6人掛けの机の前に立った。
一瞬だけ顔を上げてこちらを見て
立っているのが俺だと分かると、すぐに
目を反らして姿勢を正し、体を固くして
身構えたのが分かった。
「何、読んでるんだ?」
別にどうでもいいことを聞いてみる。
「…シェイクスピアです」
「……へぇ」
そんなの読むなんて、意外だ…。
「好きなの?」
「別に…参考に読んでるだけ…です」
言いながら、新田は机の上を片付け始めた。
さっさと会話を切り上げて、この場から
立ち去りたいのだろう。
まずい、言いたかった事を言う前に
逃げられてしまう。
俺は新田の前に出て、図書室のドアの鍵を
内側から閉めた。
新田は目を見開いて驚いた顔で後退る。
「あ、いや…これは違う
誰かに聞かれたくないだろ?
ちょっと話しがしたいんだ」
俺が焦って新田に近づくと、あわてて新田が俺から
距離をとった。
まるで獣でも見るような目に、自分に非があると
分かっていながらショックをうける。
「…とりあえず、1度座ってくれないか?」
ため息とともに言うと
新田はじっと俺を見て、あきらめた様な顔で
音をたてて座った。
俺は警戒されないように、机を挟んで新田の
目の前の椅子に腰を下ろした。
「あの日…一緒にいたの、恋人…って訳じゃ
ないよな?」
「当たり前でしょっ」
新田が目を反らしたまま即答した。
まぁ、必死で何もしてないと訴えて、平気で
新田だけをあの場に置いて帰ってしまうあたり
恋人だったとしても、最低野郎に違いないから
すぐに別れる事になるだろう。
「…とすると…援交か…?」
新田はうつ向いたまま答えず、じっと黙って
動かなかった。
「あれ、、あの日が初めてじゃないだろ?
いつからやってんだ?」
答えないだろうと思いながら聞いてみる。
教師としてじゃない。興味本意だ。
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