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「……先生も…」
「…ん?」
「先生も…初めてじゃ……ないですよ…ね?」
上目遣いに俺を見て、唇を震わせながら言った。
「ああ」
ためらわず答えた。
あんな事しておいて初めてだ、なんて通じない。
それに、それを新田が誰かにばらしても
何も得しないだろうし、最悪学校などに
告げ口されたとしても、成人している俺の性癖に
何か言える訳じゃない。
ゲイは犯罪じゃない。
俺が隠さなければならないのは
あの夜、未成年の教え子を 無理やり
犯した事だけだ。
俺があっさり男と経験があることを
認めると、形勢逆転できなかった新田は
また視線を反らしてうつ向いた。
「どうしてあんな事をしてるんだ? 金か?」
また黙りだった。
あれ?俺はこんな話しがしたい訳じゃ
無かったはずだ。
答えないならそれでもいい。
「俺は一応心配してるんだ。
どうやって引っかけてるか知らないけど
変なヤツだっているだろ…
あ、まぁ、俺が言うのも変だけど…」
その時新田がプッと小さく笑った。
ー あ、ああ、笑った!
「……あんな事はやめてほしい…
何かあってからじゃ遅いんだ…俺で良ければ
相談にのるから…まぁ俺が1番信用できない
だろうけど……」
また新田が顔を隠すようにうつむいて笑う。
「こら、笑うな」
一緒に笑いながら、注意する。
笑ってくれてホッとしたけど
教師らしい態度は保たなければならない。
「………乱暴して悪かった」
一呼吸置いて真面目な声で言うと
新田がこちらを見た。
「…言い訳になるとは思ってないけど
ちょっと酒も入ってて、魔が差したんだ
… ごめん」
新田のとび色の目が、じっと俺を見ている。
何を考えてるのか読み取れない、逆に
こちらの心が見透かされてるみたいな目だった。
俺はその視線に耐えられなくなって立ち上がり
時計を見た。
「下校時間だ、出るぞ」
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