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そんな妄想でいっぱいの中
世間ではカボチャのお化けが街を埋め尽くす季節。
暇な日曜の夕方。
俺は新田の住所を調べ、新田が住んでいるであろう
マンションを見つけた。
車の中からマンションの名前を確認して、
新田の部屋がある501はあの辺だろうか?と
ぐるぐるマンションの回りを走ったりして。
我ながらキモチワルイ。まるでストーカーだ。
こんな事して何の意味があるんだ、と
自問しながらも、無意味な行動を止められない。
新田のマンションは俺の家からは駅の数で言えば
4駅ほどしか離れてなかったけど
乗り換えが必要で、近くに住んでいるという
感覚にはならなかった。
しばらく新田のマンションの回りを走り回り
もしかしてバッタリ新田に会える(見れる?)かも
なんて、下半身で考えてるような自分の行動に
うんざりして、疲れ、馬鹿馬鹿しくなり…
近所のファミレスに入った。
そして、たまたま入ったそのファミレスで
なんと新田が一人で食事をしていた。
俺はその姿を見つけるや、バカみたいに
舞い上がり、吸い寄せられるように
新田の座るテーブルに近づいていった。
新田は一通り食事を終えていて、机の上には
食べ終わった皿と、何個かの空のグラスが
散らかっていて、肘をついて携帯を眺めてた。
「あ」
「あ」
顔を付き合わせて、同じように声を上げた。
それからすぐに新田がめんどくさそうな
顔をのぞかせる。
俺はそんな事には気づかないふりで
新田のテーブルに座った。
「一人か? ご両親は?」
母親が居ないのは知っていたけど
あえてそこには触れずに聞いた。
「ウチ、母親はいないんで…
父親は今日は出張です」
思った以上に、素直に答えられて少し驚く。
「そうか…一人でファミレスで飯か
寂しいな…」
「別に…なれてるんで」
新田は残っていたドリンクを飲み干して
伝票を手に取った。
「もう、遅いんで帰ります」
言いながら立ち上がって、軽く頭を下げた。
俺は歩き出す新田の腕を掴んで、引き止め
ポケットから自分の携帯を出して
新田の目を見ながらヒラヒラ振った。
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