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新田は驚いた顔で、それを見た。
そして汚い物でも見るような目で俺を睨む。
「……何ですか?」
「とりあえず座れよ」
ふて腐れたような顔で、もとの場所に
腰を下ろして、
俺の顔なんて見たくないというように
横を向いて、目を合わせない。
「もう一度ホテル行かないか?」
「……… は?」
新田が、聞き間違えたかな?という顔で
俺に聞き返す。
驚きで開いた口が閉まらない。
「あの日…乱暴にしちゃったからさ
やり直したいんだ」
「そんな必要ないですよ」
「この映像さ……こんなに酷くされても
悦がってるよな? 実はSM好き?」
「…ちょっ 消して!」
俺が音を出さずに、動画を見せると
新田の顔色がみるみる変わり、真っ赤になって
俺の携帯を取り上げようとする。
「今度は優しくするよ…だからもう一回だけ
試してみないか?」
新田が唇を噛んで俺を見る。
返事に悩んでいるんだろう、神経質に指先を
弄び落ち着かない。
俺だって余裕そうに振る舞っているけど
本当は口から心臓が飛び出しそうなほど
自分の放った言葉に動揺していた。
ー 言ってしまった!!
身を滅ぼす一言!
「バレたらまずい立場になるの…先生ですよ」
俺の心を見透かすように新田が言った。
「その時はお前も道連れだな」
俺はテーブルの上に置いた携帯を
指先でトントンと叩いた。
言いながらどんどん沼にはまっていくのを感じる。
今ならまだ、冗談だよ、の一言で戻れる。
頭の隅でもう一人の自分が、早く引き返せ!と
騒いだ。
「だから新田、バレないように気をつけよう」
俺の言葉に新田がゴクリと息を飲んだ。
俺は立ち上がって、伝票を持つと新田に
行こうか?と声をかけて促した。
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