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「新田そろそろ起きろ、帰るぞ」
「ぅぅ……ん…眠い」
俺たちは腰が砕けるほどやって、疲れ果て
そのままウトウト眠ってしまった。
といっても、1時間に満たない短い間。
「ほら、シャワー浴びてこい」
「ウチは帰って来ないから平気。 朝帰る…。」
「外泊ダメ」
どこからどうやってばれるか分からない。
予定が変わって親が帰ってくる事だって
あるかもしれない。
そもそも親が出張って事も本当か分からない。
俺が布団を剥ぎ取ると、仕方なくムクリと
起き上がってベッドの縁に座った。
「シャワー浴びてこいよ」
「もう、面倒だから、いい。
家で入る」
言いながら素っ裸のままボサボサの頭を
掻いて洗面所へ向かう。
「まてまて、ざっとでいいから浴びろ」
そんな精子やら何やらベトベトのまま
よく外に出ようなんて思えるなコイツ。
寝入ってしまう前に、ざっと俺が
タオルで拭いてやったけど、それだけじゃ
全然スッキリしないだろう。
俺は履いていた下着を脱いで
新田と浴室に入った。
「あ、せんせ…俺もう無理ですよ?」
「バカ、洗うの手伝うだけだ」
俺はシャワーを掴んで手早く新田の体を
流した。
華奢で、まともに筋肉もついてない白い体。
「お前、ちゃんと食ってるか?
細すぎない?」
「俺、好き嫌い多いから
食べてるけど偏ってるかもね」
「ちゃんと食え!抱き心地が悪い」
「先生の抱き心地の為に食うの?」
新田が泡に包まれたまま笑った。
「……そうだな、それもいいな」
シャワーで泡を流しながら1人言みたいに
呟くと、新田が、本気で?というような
顔で俺を見てた。
「おまえ…家に誰も居ないとき
毎回外食?」
「……毎回でもないけど
ファミレスが好きなんだドリンクバーあるし
家の近くにあるから、つい」
「あ、そ。
自分では…作らないか…」
ちゃんとした物を食え、と言おうとして
おれ自身自炊はほとんどしてない事を思いだし
高校生にそれを要求するのは無理があると
思えてきた。
「親父さんは居ないこと多いのか?」
「まぁ、多いかな…」
新田は自分の事は隠してもいないけど
進んで話したくもないようだった。
もっと色々話したかったけど、あまり前のめりに
自分の事を聞かれたら、新田はきっと
警戒して逆に距離を取ろうとするだろう。
今日のところはこのくらいで…
俺が新田を心配しているという雰囲気だけ
伝わればそれで十分だと思った。
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