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「… 嫌われたらイヤなの?」
「…嫌われるってゆうか……憎まれてるって感じ?
軽蔑されてるような…今日そう思った」
心臓が踊り出す。
自分と同じように、新田も今日1日俺の事を
思って悶々と過ごしていたのだと思うと
嬉しくて笑ってしまう。
「お前、あの時どうしたかったの?
あそこで俺に襲ってほしかったの?
あんな安っぽい誘い方して…」
「…安っぽかった?」
「安っぽかったよ。10年早いよ」
新田は両手で頬を覆った。
「あーなんか恥ずかしくなってきた」
顔の熱さを冷ますように、テーブルの
上にあったコップで頬を冷やす。
俺はじっとその様子を眺めた。
「今のお前の方が よっぽどそそられるよ」
テーブルの下で新田の足をコツっと蹴った。
蹴られて新田がチラッと俺を見る。
「襲いたくなった?」
「襲わせたいの?」
「……俺…ずっと変なんだ…」
「変?」
「先生の事ばっかり考えてて……
欲求不満かな?」
「欲求不満だな」
食後のコーヒーを飲みながら自分を落ち着かせる。
ー なんだコイツ…急に距離を縮めてきたな
「女の子には興味ないの?」
このままでは話がアッチの方に行きそうで
方向を変えてみる。
「今のところね」
「好きになったこともないの?」
「ないかなぁ…俺が好きになった奴を
盗ってく邪魔な存在くらいにしか
思えない」
「ハハハ、お前も相当重症だな」
「お前も?」
新田の目が鋭く俺の心臓を突いてくる。
「先生も重症なんだ?」
「昔はな。今はそれほどでもないよ
お前と同じようなこと考えてた頃もあったけど
今は世間体のために普通に結婚して、普通に
子供も作れそうな気がしてるよ」
「……へぇ…」
新田がストローでコップの中の氷をぐるぐる
かき混ぜ、カラカラと涼しげな音をたてる。
「でも先生と俺とじゃ、タチ場が違うから…
あんまり参考にならないなぁ」
「それは、言えてるな…」
新田の言い分に大きく頷いて、
俺は苦笑いだった。
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