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何の悩みも抱えず、今に至った訳じゃない。
新田が男でも女でもどっちでも同じだと
ただの暇つぶし程度に男と寝てるなら
愚かだと思うが心配はしない。
自分が異性を恋愛対象にできないと気づいた時の
闇に比べたら、そんな事大した問題じゃない。
新田が本当に悩み、苦しむのは
きっと、まだこれからだろう…。
「そろそろ行くか」
「………どこへ?」
「家だろ?送ってやるよ」
「 ……… 」
「欲求不満で眠れない?」
からかうように言うと、新田は顔を紅くして
首を振った。
俺に安っぽいとか、10年早いとか言われた事を
気にしているのかもしれない。
新田はそれ以上何も言わず、俺に促されるまま
店を出た。
車に乗り込んでも口数は少なかった。
ぼんやり静かに窓の外を見つめる新田は
媚びた目で饒舌に誘ってくる時とは
別人のように儚げで、むしろ艶っぽい。
「…俺の家…寄ってく?」
新田が精一杯さりげなく言った。
「それはさすがに無理」
「生徒の家だから?」
「そういうこと」
俺の言葉に、新田が伏し目がちに相づちを
うった。
「おい、そんな落ち込んだ顔するなよ」
「落ち込んでないけど」
少し口を尖らせてプイッと外を向いた。
ー 何だろう…この可愛さは…。
これも計算だったらどうしよう。
ショックで立ち直れない。
教師らしい事を言っておきながら
車内で新田を犯す妄想が止まらない。
徒歩で来れるくらい、新田の家は近い
車ではすぐだ。
どこか、誰も知らない場所に連れ去りたい。
ずっと飽きるまで抱き合って眠りたい。
マンションの来客者用の駐車スペースに
車を滑り込ませた。
「近いのに送らせちゃってすみません」
言いながらシートベルトを外す新田の手を掴んで
引き寄せ、唇を重ねた。
噛みつくように新田の唇を貪って、腰に手を
回して描き抱く。
「せん、先生っ…誰かに見られる…」
新田が弱い力で抵抗した。
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