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7. 君がつけた傷 ※

そしてその翌日、新田は俺が思った以上の 反応を見せた。 授業の空き時間、LL室にこもり、こっそり仮眠を とっていた。 この部屋は適度に防音もされていて、仮眠には ピッタリだ。 英和辞典の上に、フリースを丸めて置き それを抱えるようにして教卓の上で目を閉じた。 ウトウトし始めて直ぐに、コンコンと 扉をノックする音が聞こえ、眉を寄せる。 面倒で聞こえないフリをして目を閉じていると もう一度コンコンと扉を叩かれた。 煩いタイプの年配教師に、仮眠がバレ 文句を言いに来たのかと思い、舌打ちをして 起きあがった。 鍵を開けようとドアの前に立って、1つため息を つくと、外から声が聞こえた。 「早く開けて」 ドアに顔を寄せて、声を潜めながら。 またドアを叩く。 ドアを開けてやると、何かに追われるように 新田が駆け込んできた。 「…お前、授業は?」 「早く!鍵、閉めて!」 言われるまま鍵を閉める。 「あー… 誰かに見つかるかと思った! なかなか開けてくれないんだもん…」 「いや、だから、授業は?」 「美術が自習になったから抜け出してきた」 「なんだそれ。俺を巻き込むなよ、戻れ」 外に出そうと新田の腕を掴むと 俺に引っ張られた勢いのまま 新田が俺の胸に飛び込んできた。 「キスしよう先生」 「………は?」 正直に言おう。 俺はクラっときた。 新田の髪のシャンプーの匂いも、息づかいも。 背中に回された腕の強さや必死さも。 重なった身体の暖かさも。 全部が俺を刺激して、理性がぶっ飛びそうだった。 初めて新田からキスをされて、ぎこちなく 差し込まれた舌を受け入れる。 お互いの舌を舐め合うように絡めると 新田が微かに甘い声を上げて腰を擦り付けてくる。 両手で新田の頬を挟んで引き離すと 酔ったような溶けた目で俺を見た。 「もっとして…」 直ぐにもう一度顔を寄せる新田を押し返す。 このままでは完全に新田に飲まれる。 「…また、今度な。 とりあえず教室戻れ。 誰かに気づかれたらヤバい」 授業中に誰にも断らず生徒を呼び出す理由が 見つからない。何をしていたんだと聞かれても 誰もが納得する解答が思い浮かばなかった。 俺は担任でも、生活指導でもないし…。

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