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8. 3
ダボッとしたものを着込むと、新田の細さが
際立って見えて、もともと白い肌が、今日は
白いを通り越して青白く見える。
コンビニの明るい店内でその姿を見ていると
あまりに頼りなくて、無防備で、1人でフラフラ
歩かせるのが心配になるほどだ。
定員や、店内の客がチラチラ新田を見てるような
気がしてきて、手当たり次第に目についた物を
適当に買って、早々に店を出た。
「先生せっかち…」
俺がレジで会計をしている間に、コミックを
立読みしていた新田が、途中で無理やり
切り上げられた事にムッとして、マンションの
エレベーターに乗った途端に文句をポツリ。
「お前が寒そうだったからさ」
言いながら新田の長い前髪を撫で、耳にかけた。
「うん、寒い。早くおでん食べたい」
おでんの入った袋をそっと抱えて、カイロ代わりに
する姿は、完全に小動物のようで、ますます俺は
心配になる。
世の中にはヤバイ奴がいっぱいいるのに
こんな可愛い生き物を一人で歩かせていいのか?
親は心配じゃないのか?
新田がこの年まで、何の犯罪にも巻き込まれず
無事だったのが不思議なくらいだ。
まぁウリなんてしてた時点で、既に無事では
ないのだが…。
「おまえさ…痴漢とかナンパとかされない?」
「は?」
おでんの大根を食べながら新田がキョトンとする
「なんか、警戒心が足りないというか…
ヤバイ奴に簡単に拉致られそう」
「先生…心配しなくても
世の中そんなにゲイは多くないよ…」
新田はカラカラ笑いながら、大口でおでんを
食べ続けた。
「ゲイだって…いや、ゲイだからかな?結構好み
うるさいから、女の子みたいな子が好きとか
逆に均整のとれたモデルみたいな子が好きとか
俺みたいなどっちでもないタイプはそんなに
需要ないと思う」
「そ…そうか……」
ダメだ全然分かってない。
まぁ実際、自分もあんな事がなければ、新田は
スルーだった。
よくも悪くも目立たない普通さで、派手な生徒の
間にかくれていた。
新田の可愛さに気づかなかったなんて…いや
自分の魅力を見事に隠していた新田にビックリだ。
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