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10. 4

10時を回った頃には雪が降りだした。 テレビのニュース番組では天気の話ばかり。 俺はそれを上の空で見続けた。 トイレでの櫂の顔が瞼に張り付いて離れない。 あの時何を思ってたんだろう…。 俺はいても立ってもいられなくなり車の鍵を 握って、家を出た。 ー まさか、こんな天気の中うろついたり しないよな…? そう思いながら向かったのは、櫂のよく利用して いるファミレスだ。 雪は風に舞って、道路に落ちてはすぐに消える。 路肩はうっすらと白くなっていたけれど まだ積もる程の雪ではない。 ファミレスに入って、ぐるりと店内を見渡した。 こんな天気のせいか、普段より客は少ない。 その客の中に見慣れた小さな肩を見つけた。 広い4人席のテーブルに1人で座って 携帯をいじり、時折窓の外を見る。 その姿を見たら、なんだか泣きたいような 訳のわからない感情が込み上げる。 「出歩くなって言っただろ」 声をかけると、驚いた顔で俺を見上げる。 「わざわざ何で外で食べるんだ。 こんな日くらい、家で大人しくしてろよ」 「……ファミレスが好きだって言ったでしょ? ここはいつも明るいし、必ず人がいるし おしゃれで、人生楽しんでますって感じの 人ばっかりの、おしゃれなカフェよりも 気楽で、俺に似合ってる」 「寂しいなら友達誘うとか…家でも今なら オンラインでいくらでも楽しめるだろ」 「誰も本当の俺を知らないし… 同級生と一緒にいても なんか浮いちゃうんだ 間宮先輩みたいにグイグイこられても めんどくさいし…。気楽に過ごしたいけど 1人ではちょっとさみしくて、人恋しい… そんな感じ?」 俺はドリンクだけ注文して、櫂の残していた ポテトを食べた。 ポテトは冷めきっていて、旨いとは到底言えない 物になっていた。 「……どうしてきたの? こんな天気なのに」 「生徒がおそくにフラフラ出歩いてないか 見回りに来たんだ」 櫂はフッと笑って、また窓の外を見た。 「出会い系で、会えそうな相手を探してたんだ」 机の上の携帯をトントン叩く。 「おい」 「でもなかなかいい人が見つからなかった 俺だってそれなりに 危険がないか、とか ちゃんと金払いそうか、とか見定めてから 会うことにしてるんだ」 「おいおい」

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